レインツリーの国 (新潮文庫)

レインツリーの国 (新潮文庫)

内容(「MARC」データベースより)
きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。しかし、かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった…。メディアワークス刊「図書館内乱」の中に登場する書籍「レインツリーの国」が実物となった。


正しすぎるから何度も間違える「伸」と、
退くか戻るかの間で幼い戸惑いを繰り返す姿がみっともなくて、でもうつくしい、「ひとみ」。
恋愛ストーリーとしてはもう甘くて甘酸っぱくてほろ苦くて(作中の言葉で言えば『青春菌』が満載、ふたりはどちらも20代だけれど)ほんとに夢みたいだろうって思うほどで、
でも日常の出来事の中での心理描写にしてはささくれてちょっとえげつないくらいぐちゃぐちゃな葛藤や意識も描かれていて
「すごくきれいな物語」だけど
だからこそとんでもなく「えぐってくる物語」、でもある話。



有川さんについてはこないだ読んだ短編集の作品しか知らなかったんだけど、
図書館戦争」シリーズの作者さんなんですね。図書館戦争の名前は知ってた!
(ほんとに私、著書と著者が一致しないな…)
作風的にはライトノベルに属するんでしょうか?
互いが交わすメールがたびたび文面そのまま挟まれる構成とか、
作中劇が作者の他の作品とリンクする部分なんかはそれっぽいかなーという感じ。
ささくれていくいたたまれない部分も砂糖菓子みたいな甘い部分も、
有川さんの軽い文体が活きてる感じがして好きです。



ひとみの葛藤や、自分の中に見いだした心の奥の目をそらしたくなるような部分、
それはひとみが置かれた状況のせいだけじゃない、一人の人間としての弱さだ、
って描写がいいなと思った。